「読書療法」をテーマに香りを作りました

本の香り?

「『本の香り』』って、つくれるものでしょうか?」

心惹かれるご質問をくださったのは、寺田真理子さん。
寺田さんは日本読書療法学会で会長を務めていらっしゃいますが、今年設立10周年を迎え、記念に「本の香り」をつくることを思いつかれたそうです。

お話をうかがうと、本は本でも「古書の香り」がよいそうです。
古い本を手にした時の少し甘いような粉っぽい香り…本好きさんには好きな方が多いそうです。

さらに、読書療法【Bibliotherapy ビブリオセラピー】の歴史についても教えていただきました。
古代ギリシャの図書館のドアには「魂の癒しの場所」と記されていたそうです。
単に「本の倉庫」「勉強する場所」ではないのですね。
本に書かれた智慧や思想が精神活動を鼓舞したり、物語が心を潤すことを、当時の人は「魂の癒し」と表現したのです。

古書の香りと、発掘された古代の石造りの図書館のイメージ、本を読むことでうつ病から回復したという寺田さんのストーリーをもとに、私なりのBibliotherapyの香りを作って10周年のお祝いにお贈りしたいと思いました。

香りは、「本」そのものというより、Therapy=「魂の癒し」の部分にフォーカスすることにしました。

癒しがどこから起こるかというと、まずはじめは「受容」であると考えます。
その状態を受け入れてそっと寄り添うような、香りが長続きし、深く温かみのあるウッディをベースにします。
そこへ、癒しが起こる過程としての腑に落ちた感覚、学び続ける気持ちを加えました。
苦悩や悲しみ、嫉妬など黒い部分も必要ですから、これも加えます。
そしてこれらが、古書の中に、石造りの図書館の中にある…
…というイメージで香りを作っていきました。

本に救われる

制作の途中でどうしても思うような香りにならず、悩んでいた時、ふと手に取った寺田さんのご著書「うつの世界にさよならする100冊の本」の中の一節に救われました。

例えば、聖書を読んだりするのもわたしは好きなのですが、キリスト教のように「唯一絶対的な神さま」を信じることを迫られると、とても苦しくなってしまいます。受け入れられるかどうかを突きつけられることに、どうしてもなじめないのです。

でも、仏教では「全能の創造の神さま」はなく、すべては因果関係で語られます。原因に対して縁が働きかけることで結果も変わる、と考えるのです。

うつの世界にさよならする100冊の本  寺田真理子著 ソフトバンククリエイティブ 

はじめは、Biblio=聖書から、聖書に登場するフランキンセンスを主軸にしたのですが、原液でのブレンドは香りが濃すぎるせいもあるのでしょう、いろいろ工夫してみても硬質で真っ直ぐな印象が強く立ち、「受容感」が出ません。
なるほど、仏教か、ということでメインの精油をサンダルウッドに変えてみたところうまくいきました。
サンダルウッドの香りはゆあんゆあんと形なく広がりますから、「受容」にはぴったりだったのです。
そこへフランキンセンスを少しづつ加えると、静謐な石造りの図書館が現れました。

寺田さんが香りを気に入ってくださったことがまずとてもうれしかったのですが、それからラベルやリーフレットのデザイン、販売サイトまでつくってくださり、あれよあれよという間に形になっていって、すごいなぁと感嘆しています。

Bibliotherapyの香りは、本が好きな方が、しおりなどにつけて香りを楽しんでいただくことを想定して原液を約29%に希釈してあります。
読書療法のご案内も同封されますので、ご興味のある方のお手元に届くといいなぁと願っています。

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